Keiさんの日記 「トーグを作った会社のお話」

Kei
Kei日記

2025/07/27 14:13

[web全体で公開]
😶 トーグを作った会社のお話
ご機嫌よう。

先日パラノイアの歴史を振り返ったところ、当初の発売元である West End Games(以下 WEG)の歴史まとめが読みたいというリクエストを頂戴しましたので、パラノイアを作った会社がどうなってしまったのかを見てみましょう。他に日本語版が出た TRPG としては、トーグを作った会社でもありますね。

WEG を設立したダニエル・スコット・パトラーはダートマス大学で学士号を取得後スタンフォード大学で法学博士号を取得、ニューヨークで弁護士会に登録というエリートで、最初の勤務先は Bucci Retail Group(以下 BRG)というイタリアンファッションの輸入業者でした。また、いくつかのゲーム会社でプレイテストに携わっていたようです。
1974年、WEG は BRG から資金を得て設立され、ゲーム事業が始まりましたが、この時点でリリースしていたのは TRPG ではありません。ともあれ WEG の親会社は BRG でした。
さて、1983年になると WEG はコスティキャン(パラノイアの作者)といったデザイナーを雇い入れ、翌年にはパラノイアで TRPG に参入します。パラノイアは好評でオリジン賞も受賞しました。こうして WEG は TRPG に力を入れるようになり、BRG からの資金を活用してゴーストバスターズやスターウォーズといった版権ものの権利を取得し TRPG 化するようになりますが、この二作も好評でした。1990 年にはトーグを発売しまたも好評でしたし、1996年にはゴーストバスターズのシステムを大幅リファインした汎用システム D6 System を発表し、D6 System を採用したタイトルとして、インディジョーンズやメン・イン・ブラックが発売されます。
一方で順風満帆に見えた80年代後半〜90年代前半ですが、実際にはそうではありませんでした。パラノイアのデザイナーは意見の相違によって早々に WEG を離れていましたし、これまでに触れたいくつかの会社と同様に高コスト体質だったことに加え、高額なライセンス料は利益は圧迫していました。親会社ともども経営も杜撰だったようです(杜撰な経営も TRPG 会社にはよくある話ですが)。90年代なると WEG はパラノイアの製品ラインの失敗により窮地に立たされますが、それに呼応するかのように親会社 BRG も業績が悪化していて、親会社に資金が流れたり果ては親会社との間で不正会計さえ行わたようです。WEG に関して言えば D6 System 採用 TRPG はどれも商業的には成功しませんでした。BRG は O.J.シンプソン事件の公判で提示された証拠品(といってもシンプソン容疑者の服とか靴です)が BRG が輸入していたものだったことによるイメージの下落がとどめを指し1998年に破産、煽りを受けた WEG は民事再生を選びますが、その結果ライセンサーはライセンスを撤回、同時期に WEG を去ったパラノイアのデザイナーによる訴訟もあり、破産を免れることができなくなります。
WEG 再生のパートナーとなったのは Yeti Entertainment(以下 Yeti)ですが、既存のライセンスの喪失、新たに取得した DC ライセンス製品や Yeti が持つコンテンツの TRPG が失敗に終わると WEG は早々に Purgatory Publishing(以下 PP)に売却されます。PP からは Torg の改訂版が出版されますが販売は振るわず、2008年には WEG 部門は赤字だと暴露されます。最終的に PP 時代の製品開発はことごとく失敗し、2010年には Torg が Ulisses Spiele に(トーグ・エタニティは US の製品です)、その他複数のシステムが Precis Intermedia に売却され、2016年には残った D6 System も Nocturnal Media(以下 NM、White Wolf の創業者が設立したゲーム会社です)に売却されました。D6 System は NM 下で複数のゲーム会社とライセンス契約されていますし、そのうちの一タイトル「カーボングレイ」は D6 System を改定した D6 Mangetic Variant を採用し、2022年の ENNIE 賞で Best Production Values にノミネートされています。
いずれにせよ WEG は会社としてもブランドとしても消滅していますし、創業者のダニエル・スコット・パトラーは Yeti での製品開発に失敗すると解雇され、新たな会社を設立するといくつかのボードゲームをデザインしましたが、その後 SF 作家に転身し、2020年に病死しました。
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