佐藤さんの日記 「小説:汝の為したいように為すがよい」

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佐藤
佐藤日記
2019/10/18 18:49[web全体で公開]
😶 小説:汝の為したいように為すがよい
(▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼) 前回(https://trpgsession.com/comment-detail.php?c=akak46ek&i=akak46ek_157036006501)

 失踪したコボルドを探し、冒険者になったエルフが初めての冒険を終えた後の話。



【あんまり賢くないキルヒア神官】
「その時、誰かが言ったのです……汝の為したいように為すがよい、と」
「正直に言わんと牢にブチ込むぞ」
「すみません、ハーヴェスの法律を知りませんでした」
 平服する気分で謝る。机を挟んで向かい側にいる衛兵さんに溜息つかれました。
 私は人探しと蛮族を知るという目的を持ち、ハーヴェスにやってきました。ハーヴェス到着2日目で衛兵さん達の詰め所に連行されました。
 到着1日目は万事順調だったんですよね……道を歩いていたら仕事の依頼が向こうからやってきて、実働2時間ぐらいで「約1000G+りんご」が手に入りましたからね。冒険者ってスゴい、とルンルン気分でした。
 幸先いい始まりだったので、ハーヴェス生活2日目の今日は人探ししつつ、ちょっとした……そう、ちょっとしたお小遣い稼ぎをしようとしただけなんです。
 結果は衛兵さんに抱えられ、「あぁ~」と連行されるというものでしたが。
「私は余ったマナで【キュア・ウーンズ】をかけただけのつもりだったんです」
「金をもらってか」
「えぇ、まあ……お金といっても1回1Gだけですよ?」
「それがヤバいんだよ。法に触れる」
「癒やし屋さんと名乗りましたが、いかがわしい商売じゃなかったんです。純粋に……そう、純粋に疲れた港湾労働者の方々を癒やして金が欲しいなと思っただけで」
「キュアだけならまだギリギリだが、金を取っちゃあいけねえよ」
 衛兵さんはそう言い、改めてハーヴェスの法を教えてくれました。
「ここ、ハーヴェスは交易で栄えた都市だ。商売関係の法……利権は厳しく管理されている。【キュア・ウーンズ】を行使するのも利権に引っかかる」
「商売道具になっちゃうわけですね。救命行為ですら」
「単なる人助けならいいんだが、お前さんの場合は金を取ろうとしたからな。まあ、金を取らなくてもやりすぎると神殿の神官サマ方から睨まれるぞ」
 つまりキュアでの癒やしは「神殿の利権」のようです。
 ぶっちゃけ便利ですからね。怪我を癒やし、病も癒やす。二日酔いですら【キュア・ポイズン】で治せます。里のオジ様方が宴会した翌日、タダで駆り出された思い出が脳裏を過ります。
「ハーヴェスの神殿って、どこもキュアでお金取っているんですね」
「必ずしもそう、というわけじゃない。さすがにハッキリと金を寄越せって言う事はあまりない。暗黙の了解として多少、寄進するって事はあるが――」
「あるいはお金は取らずとも、信仰という対価を得る事もある、って事ですね」
「そういう事だ。……つーか、嬢ちゃんはキルヒアサマの神官だろ?」
「はい。賢神キルヒア様に仕えています」
「ハーヴェスにいるキルヒアの神官は教えてくれなかったのか? 顔役とか……」
「昨日は忙しかったので、今朝ご挨拶に伺いました」
「で?」
「気をつけるべき事はありますか、と聞くと、汝の為したいように為すがよい……と」
「それホントにキルヒアの神官か? 本当にキルヒアサマの神官か嬢ちゃん」
「もちろんです。見てください、この聖印。【キュア・ウーンズ】も使えます」
「そうか、賢神の聖印でキュア使って労働者から金を巻き上げようとしてたな」
「その節は大変ご迷惑をおかけいたしました」
 ハーヴェスでお金稼ぐの楽ですね、と思ったら言うほどではないですね。
 世の中を舐めちゃいけません。都会は怖い。覚えました。知力の高まりを感じます。

「今後は辻キュアしません」
「よろしい」
「酒場で【キュア・ポイズン】したらヤバいですかね?」
「学習しろ」
「私はちょっと、酒場の外でゲロを吐いている人の背中を撫でただけ……その結果、神の奇跡が舞い降り、迷える酔っぱらいが救われるだけなのです。ねぇ?」
「金を貰うなよ」
「仲良くなって食事をごちそうしてもらうぐらいは……?」
「…………」
「冗談です。法の抜け穴を探すとか、そういう事はしません」
「どうしても余っているマナをビュッ! と消費したいなら、神殿に行け。神殿で奉仕活動でもしてろ。正式に、神官の仕事としてビュッ! とマナ吐いてろ」
 余ったマナをビュッと使う。いかがわしい商売のように聞こえます。
 ですが、奉仕活動は望むところです。これでも神官ですからね。病に苦しむ人の気持ちも多少わかります。怪我も治します。どこかに血だるまで転がっている重傷者いませんかね。
「奉仕活動じゃ金はもらえないかもしれんがな。寄進をもらっても神殿の金庫行き。お前さんのような平神官は1ガメルの得にもならない」
「神殿に蓄えがあるのは良いことです。いざという時、多くの人を助けられます」
「えらいなぁ。辻キュアで小遣い稼ぎとか画策してなければ」
「うぅ……」
「初犯だし、昨日は冒険者として活動して犯罪者まで連行してきてくれたしな……。今日のところは軽めの説教だけで勘弁してやるよ」
「私が連行してきたのではなく、偶然いっしょにいたお二人が……冒険者さん達が連行してきてくれたのです。私はその後方で神官ヅラしてただけです」
「その二人を癒やせよ」
「いつでもキュア出来るよう、控えてたんですよ。お二人共、殴りかかられても華麗に避けるので、ほぼほぼキュアする必要性がなかっただけなんです」
「へぇ。そいつは腕の良い冒険者だな……」
「はい、おかげで助かりました」
 私、ほぼほぼ観戦しているだけでしたからね。
 それでお金貰えるんですから、冒険者って素敵なお仕事です。
 今後は辻キュアは控え、冒険者で真っ当に稼ぎ、生活が安定してきたら奉仕活動や人探しをやっていきましょう。いつでも冒険者仕事あるとは限らないでしょうし、他の仕事もやらなきゃですけどね。

「あ、そうだ、衛兵さん、ついでに教えてほしいのですが」
「あ? なんだよ?」
「ハーヴェスでコボルドが集う場所って、どこでしょうか?」
 私は「探し人がコボルド」という事情を話し、衛兵さんに相談しました。
「ふーむ……まあ探し人なら、掲示板に情報提供依頼を……」
「それは今日しました」
「自分の足で探すなら……コボルドが集う場所、ねぇ……」
 衛兵さんは椅子に寄りかかり、思案顔を浮かべていました。
 ですが、直ぐに思いついたのか答えてくれました。
「肉球同盟には行ってみたか?」
「肉球……なんですか、その可愛らしい同盟……」
「仕事仲介業者だ。コボルドも結構な数が登録していたはずだぜ」
「へー、ハーヴェスにはそんなのがあるんですね」
「これもまた商売の種だからな」
 肉球同盟。人手が足りない場所に人手を紹介する。人材派遣業。
 冒険者ギルドに近いものがありますが、肉球同盟の場合、派遣先は港湾労働、飲食業、職人の補助と多岐に渡るようです。
 農繁期にはコボルド達が荷馬車に乗り込み、各農地に移動していく光景を見られるんだとか。たくさんのコボルドが次々と出荷……もとい派遣されていき、農作物と共に帰ってくる光景は風物詩となっているようです。
「近頃はハーヴェス王国の領地外の仕事も増えているらしいな。働きが気に入られりゃ、ピンハネされずに直接雇ってもらえるようになる」
「紹介するだけでピンハネ……」
「だけじゃねえさ。身元の保証もする。そこは冒険者ギルドと同じようなもんだな。何かあれば肉球同盟が対処する。罪人が出たら人を雇って追わせて、ケジメつけるとかな」
「ふーむ……」
 コボルド達の境遇を考えると、仕方ないところもあるのでしょうか。
 彼らは一応、蛮族です。急にふらっと現れた子を雇って「何かあったら困る」と考える人族もいます。実際、流れのコボルドを雇った砦がコボルドに手引きされた蛮族の軍団に陥落させられた事件、ありますからね。
 ピンハネ搾取が酷ければ話は別ですが、ハーヴェス外の仕事もあるほど順調であれば、コボルド達側にとっても需要があるのでしょう。
「コボルド、肉球。かわいい要素が詰まってます」
「登録してるのはコボルドだけじゃねぇからな? 土地を継げない農家の次男三男とか、ダイケホーンの奴も仕事探しにくるらしいな」
「冒険者ではなく、他の仕事を求める人もいる、と」
「万人が冒険者になれるわけじゃないさ。確かに若い奴らは冒険者に憧れる。瞳を輝かせて冒険に出て、濁った瞳で腐臭を伴い帰ってくる事も多い」
 冒険者稼業の現実。命の危険がある仕事。
 上手くやれば稼げはするものの、命がけなのは嫌だーーという人は他の仕事を求める。それこそ肉球同盟に仕事を探しにくる。
 肉球同盟以外にも手配師やってる人は大勢いるようですが、最近は肉球同盟が強いようですね。雇う側にとっても大きなところに頼む方が安心できるのでしょう。
「ただ、コボルドはなりたくても冒険者になれない事も多い。器用だが弱いからな。ギルドで門前払い、あるいは依頼主が『コボルドは頼りない』と断ってくる」
「まあ……向き不向きはありますからね」
「中には冒険者になりたいあまり、『自分は常に獣変貌しているリカントです』と言い張るコボルド達もいた」
「かわいい……。さすがに門前払いにされたんですよね?」
「ギルドが面白がって冒険者として送り出したらしい。そしたらちゃんと依頼を達成して帰ってきて、リカントと言い張るコボルドのパーティーが今も活動してるのさ」
 可愛いけど、ギルドの対応もどうなんでしょう、それは。
「ちなみに1人、本物リカントも混ざってる」
「自称&本物リカントパーティーなんですね」
「いや、本物のリカントは『自分はコボルドだ』って言い張ってる」
 わけがわからない……。けど、そうか、獣変貌したリカントさんなら大柄なコボルドと言い張って通るんですね。……言うほど通りますかね? でも、コボルドに囲まれて冒険に出ているのはちょっと羨ましい。
 さすがにそのコボルドさん&自称コボルドさん達は私の探し人ではないと思いますが、機会があれば会って話をしてみたいですね。
 衛兵さんには他にも「コボルドがいそうな場所」の心当たりを教えていただきました。その後、詰め所から解放してもらいました。
「もう来るなよ~」
「努力します」
 中々に有意義な時間でした。この情報収集の巧みさ……キルヒア様に仕える神官として、賢さの有効活用が出来た気がしますね(前科一犯)
 有意義でしたがお腹もすいてきたので食事に行きましょう。冒険者ギルド支部に行って、食事がてら「楽に稼げる仕事か、蛮族絡みの仕事はありませんか?」と聞いてみましょう。良き出会いとお金に恵まれますように。

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レスポンス

もみじ
もみじ佐藤
2019/10/18 20:09[web全体で公開]
> 日記:小説:汝の為したいように為すがよい
コボルドェ・・・2.0では蛮族PCとして作れたんですよねー・・・。
2.5でも実装されるでしょうか・・・w期待しておこう。
わっか
わっか佐藤
2019/10/18 19:45[web全体で公開]
> 日記:小説:汝の為したいように為すがよい
すごい、ルスクルちゃんの冒険前日譚ですね!
クールな見た目に反してなんというかこう、ポンコツ感があった…w
キュアをかけるだけでも利権が絡む。剣の世界もなかなか世知辛いようで。

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