七月さんの日記 「ケダモノオペラ「ツークツワンクの成れの果て」」

七月
七月日記

2024/07/23 22:48

[web全体で公開]
😊 ケダモノオペラ「ツークツワンクの成れの果て」
(▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)素敵で気高い悲劇の王子、ノスフェラトゥのリュミエールさんと水場の群れにて通過させていただきました!
大いなる厄災のドラゴンを連れて行ったシナリオであそこまでハッピーエンドの物語を紡げたのは同卓ケダモノのリュミエールさんとNPCのグレイスちゃんのおかげだったので、今日一日思い返しては「すごいな…」と余韻に浸っておりました。
一緒に楽しく駆け抜けてくださった温森おかゆさんと、最初から最後までケダモノたちに寄り添った描写をしてくださったぎんじょーさんに最大限の感謝を…!

やっぱりケダモノオペラって最高だな。
ありがとうございました!

(伝説はかなり後にこっそり更新する人間なので素敵な想い出を胸にいつか…!作れたらいいな…)


※以下、シナリオのネタバレを多分に含みます※























伝説:「雨のふるくに」

その日、その国では、同盟国である隣国の姫君を悼む催しが行われていました。
隣国との合同の催しをよく執り行っていた司祭が発案したその行事が催されるのは、もう3年目。
そしてその日が最後の開催日となる日でした。

王室の壁を覆いつくすほどの尖った大きな氷塊はいつからか王宮のシンボルとなっており、そこに追悼の黒を基調とした飾りつけが施され。会場の雰囲気は1年目、2年目と回を重ねるごとに和やかに明るくなり、その年は王室直属のシェフが腕を振るった料理や国民が持ち寄った様々な料理が5列の大きなテーブルにたくさん並べられていました。そして、普段はほとんど人前に姿を晒すことのない女王を一目見ようと、身分を問わず国中から多くの人々が集まっていました。

長く王座についている彼女はいつ見てもその姿かたちが変わることはなく、隣国の姫や宰相と共に人ならざるものと噂されていましたが、あまりに豊かな生活と平和が長く続いたためか、それを暴き糾弾しようとするニンゲンは一人もいませんでした。



初老の司祭が想い出話に花を咲かせる民衆の合間を縫って、階上の氷漬けの玉座にひとり座る女王にグラスを渡し、にこやかに語りかけます。


「体制が変わったあとも隣国は更なる発展を見せているようで。後継ぎにも恵まれたのでしょうな。同盟国として、まこと、素晴らしいと感服するばかりです」


「…王ならばわかるのだろうか、ここにいる民の笑顔も、そなたの言葉も。妾には、何もわからなくなった」


「?? ハハ、妙なことを仰る。……どうなさったのです」


微笑をたたえる女王に同じ微笑で返しながらも首を傾げた司祭は、あることに気がつきます。
銀色とも乳白色ともとれる粘着質でキラキラとした大粒の液体が、上からぼたりぼたりと落ちてきて床に水たまりを作っていました。その水たまりには人影が映っているようで、瞬きするたびに、隣国の姫の姿にも、隣国の宰相の姿にも、その二人の姿にも見えました。

司祭が不思議に思って床に手を伸ばしたその瞬間、


【触れるなッ!それは妾の宝石だ!!】


叫び声とも呼べない、とてもニンゲンの生み出すものとは思えない、恐ろしい音が響きました。
その音の出どころから目が離せなくなった人々が見たのは、大きな白い竜…ケダモノの姿でした。

激昂した竜の咆哮が王室のオブジェとなっていた氷を砕き、融かし。その中から現れたのは遠い昔に行方不明となっていた国王や大臣たち。突然の出来事に人々が腰を抜かし、声も出せず呆気にとられているうちに、女王――ケダモノも氷雪が融けるように姿をくらましてしまいました。閉じた瞳から零した、黒ずんでしゅうしゅうと音を立て始めた粘液だけを残して。


それから、氷漬けになっていた大臣たちにより様々なことが伝えられました。

遠い昔に隣国を滅ぼしたのはケダモノだったということ。
そしてこの国の女王も人に害をなすケダモノであったということ。
その証に、ケダモノの体液が猛毒であったこと。

かつての国王と大臣たちは酷く怯え、いつか訪れる災厄の予言を残したのちに散り散りに逃げていきました。
そして、その国の中で彼らの姿を見ることはもう二度とありませんでした。


『ケダモノと関りを持ったこの国には、いつか必ず災厄がもたらされるであろう!』


彼らの言説は国内に混乱を招くには充分すぎるものでした。
さまざまな議論が続けられたのちに人々の心に残ったのは、深い悲しみと畏れでした。
その国の人々は融けた氷を追悼の催しのシンボルに定め、国事として毎年執り行うことにしました。
長く平和をもたらした慈愛の女王と、いつか訪れるだろう悍ましい災厄を、決して忘れないように。


――その季節に必ず降るようになった長雨を畏れ崇める、ある国のおはなし。

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