マダラさんの日記 「五月雨屋敷の走馬灯 それから 三村桐野の場合」

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マダラ
マダラ日記
2020/05/24 15:54[web全体で公開]
😶 五月雨屋敷の走馬灯 それから 三村桐野の場合
(▼ ネタバレを含むコメントを読む。 ▼)

以下は5月22日に開催されたセッション「五月雨屋敷の走馬灯」(KP:ダイン様)にさんかしたマダラのPC「三村桐野」の、シナリオ後のアフターストーリー的なものです。同セッションで同卓させていただいたりちゃ様の感想形式に触発されて書いたものとなります。ネタバレ注意です!



 
 隣町に向かう鉄道の路線には、一瞬だけ海が見える場所がある。晩夏の陽を浴びて、蒼い海面がきらきらと光る、その光に目を刺され、僕は思わず目を細めて、視線を手元の古びた本に落とした。

 救いのない話だ。最初に読んだときは単にそう思った。戦争の悲惨さを描いた、辛いけどよくある話。小学生の頃に国語の教科書で読んで、それきりあとは目を背けるような話。今までもこれからも、世界から消えることはきっとない、悲しいけどありきたりな話だと。

 けれど、今はもうそんなこと言えない。

   見てしまったから。

   聞いてしまったから。

   そう、僕は触れることさえしたのだ。

 藍川の後に図書館であの本を借りて、一晩かけて読んだ。塩辛い水に頭の先まで使って悶えるような、そんな苦しい物語だったけれど、それでも、そこには想いがあった。決して忘れないという。誰かから誰かへの、波の音のように微かだけれど消えることのない、誓いがあった。

 忘れないことが、想い続けることが、あんな風に誰かを救うなら。救えるなら。

 そうだ。それが僕の目指したことだったじゃないか。

*****

 新聞部で隣町の無名の作家について特集記事を組みたい。そんな僕の提案を聞いた部長の顔には明らかな侮蔑が浮かんでいた。
   入部して以来、この人とは徹底的にうまが合わない。僕の書く記事や取ってくる話題は、彼に言わせればいささかロマンチックで非現実的に過ぎるらしく、そのおかげで僕は春からずっと、部内での孤立を強いられていた。一丁前に異端児を気取ることができればいいのだけれど、僕はこの男の視線の前では委縮してしまって、目を伏せながらしどろもどろになってしまう。

「ゆきやま……聞いたことないな。桐野くん、なんでまた、これを書こうと思ったんだい?」
 苦笑いと共に部長が投げた問いに、呼吸が詰まるのが自分でもわかった。心は既に背を向けかかっている。

   逃げてしまえよ。


 いいや、お断りだね。

 そんな風に自答して、僕は息を吸う。
   頭の裏側で、凛とした唄が響く。
   それは古い御伽噺。誰かの誓いの物語。

「……正直、理由はわかりません」

 その目を真っ直ぐに見据え、僕が放った言葉に、部長は眉をあげる。

「ただ。書かないといけないと思ったんです」

 知ったなら、見たなら、それはもう誰かの誓いじゃない。僕らの祈りだ。

 その後のことは、正直緊張のせいでよく覚えていない。部長が僕の目を見返して、重々しくうなずいたことは、なんとなく覚えている。

 案外やるじゃない。そんな言葉と共に、誰かが背中をとんとんと叩いた気がした。

*****

 透明な潮風が頬を撫でる。あの時とおんなじ夕方の海岸で、僕は額に浮かんだ汗を拭い、お気に入りのスポーツ・ドリンクに口をつけた。

 一日をかけて街を歩き回っての取材は、情けないことに自分の未熟さを痛感する結果となった。あの時にやっていたみたいにうまく頭も働かず、求めるものを見つけるための糸口も見えない。

 そんなわけで、僕は小さな失望感と共に海を眺めていたのだけれど、そのうちに、軽い笑いが口から漏れた。

「まあ、そりゃそうか」

 この海だって、一人で来てたら、飛び込もうとか、泳ごうとか、思いつかないもんな。いや、思いつかないよな。普通。

 そう呟いた瞬間に、背中に鈍い衝撃が走った。ぐえ、とかそういう言葉にならない呻きをあげながら前のめりに転んだ僕の頭上で、賑やかな声がする。僕はため息をついて、痛む腰をさすりながら、立ち上がると、声の方向を睨みつけた。

「……なんでいるのさ」

 というか挨拶代わりにスーツケースで突っ込んでくるなよ。そう抗議する僕の言葉も彼らは意に介さない。抜け駆けはズルいとか何とか言ってくる阿良川の横で、秋を前に細々と営業している数少ない海の家を見つけた小守が早速鴎にたかっている。藍川は海に目を向けているけど、今日はちゃんと水着持ってきてるんだろうな。
  そんなことをあれこれと言いながら、僕は小さく微笑む。

   友達と海なんて、ほんの半年前の自分には想像もつかなかったけど、案外悪くない、そんなことを思う。

   いや、そんなことを思っている暇もないか。こうやって気を逸らしているうちに皆の話はまた明後日の方向に向かっている。海まで来ておいて結局いつものファミレスに行くのか。まあ、別にいいけど。

   と、一瞬夕日を受けた海面がきらりと光って、僕らは皆ふっと黙って、そちらに目を向けた。

   そう、一瞬だって油断がならない、息を吐く暇もない、やりたいことがいっぱいのそんな日々の中で、僕らはたまに海を見る。あの夕暮れのことを思い出す。

   それが僕たちの──いや、わざわざこんな言葉を使うのは気恥ずかしいけれど、まあ、ほかにふさわしい言葉も思いつかない。それなら、きっとその言葉は、僕たちの為に、この瞬間の為にあるということなのだろう。

   だから、これがきっと、ちょっと風変わりな、それでも眩しくてあたたかい──僕たちの青春のかたちなのだ。

〈おわり〉


以上となります。長々と読んでくれた皆様、ありがとうございました。三村はきっと今回の件で新聞部員として目指す理想と、大事な友人を見つけられたことでしょう。

切ないけれど爽やかな、青春って言葉以外で言い表せないような素敵な物語でした……終わった後もしばらくモチーフソングだという曲を聞きながらしみじみしていた。
最後の方、PCの三村の目を通して見るNPCのことが物凄くいとおしく感じられてしまって……その気持ちの何パーセントかでもRPに乗せられてたらいいなあっておもいます。自信はないですが。

この形式の振り返りとても楽しいな……これからも、全部とはいかないかもですが。気が向いたらちょこちょことやっていくかもしれません。
そして改めて、木枯らしさん、りちゃさん、柏木@さん、そしてキーパーのダインさん、ありがとうございました!

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レスポンス

柏木
柏木マダラ
2020/05/24 20:54[web全体で公開]
> 日記:五月雨屋敷の走馬灯 それから 三村桐野の場合
りちゃさんもマダラさんも語彙力が凄まじいですね..!!
羨ましい..。エモかったり海の回想で笑わせて貰ったり。
藍川ちゃん水着持っていったかな..?

ご迷惑もかけたと思いますがまたの機会がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。

いやぁ.この形式の日記読むのハマりそうです(笑)

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